企業と携帯事業者がネットワークをシェアする「ツルハ・モデル」とは - 松田次博 間違いだらけのネットワ...:ITpro
写真1●宮川製麺所のかけうどん
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年が改まって1カ月近くたって年末年始のことを書くのも気が引けるが、年末から年明けの間に二つの「屋」に出会った。「うどん屋」と「本屋」である。
まず12月下旬、香川県へうどんツアーに行き、評判の高いうどん屋を1日で5軒まわった。このうち、最も有名なのはテレビにもよく出る「山内」という店なのだが、筆者には麺のコシが強すぎて良くなかった。ベストは宮川製麺所のかけうどん(写真1)だ。
土曜日の朝10時頃に行ったのだが、地元の人たちでいっぱいだった。かけうどんの小が一杯140円。トッピングの「たまご天」は80円。このおいしさと安さなら、朝食や昼食、あるいはおやつ代わりに毎日のように食べに来たくなるだろう。
新明解国語辞典によると、うどん屋の「屋」の意味は「それだけを専門に扱う職業(の人)」となっている。しかし、これだけだと讃岐のうどん屋には弱い。「それだけをこだわりを持って専門に扱う職業」だ。それぞれの店が麺やだしに個性を出し、うどん文化を作り上げている。
さて本題に入ろう。昨年11月、ツルハホールディングス様(以下、敬称を略してツルハ)のネットワーク構築プロジェクトが始まった。同社は、東日本を中心に店舗を展開する大手ドラッグストアチェーンの持ち株会社で、今年4月に1000店舗となり業界3位の規模になる見込みだ。いつも通り、提案から設計・構築・運用に至るまで筆者が陣頭指揮を執っている。
このネットワークの特徴は、筆者が考案した公衆無線LAN(ホットスポット)でネットワークシェアリングを実現する「ツルハ・モデル」にある。このアイデアを実現する最初のお客様の名前をいただいてモデル名にした。「鶴羽」は同社の創業家の姓だが、いかにも縁起が良く新年のテーマとしてもふさわしい。今回はツルハ・モデルとホットスポットの活用について述べたい。
企業が通信事業者からネットワーク利用料をもらう
ツルハとの縁は、昨年7月に筆者が札幌で行った講演を執行役員情報システム部長の松原博美氏が聴いたことに始まる。講演直後に名刺交換に来られ、ネットワークの提案を依頼された。大幅なコスト削減と、これまでにない新しい価値を生みだすことが新ネットワークの目的だ。
スマートフォンの普及によるトラフィックの急増に悩んでいる携帯事業者各社は、トラフィックを携帯網から固定網にオフロードできるホットスポットの展開に注力している。聞けば、ツルハにも複数の携帯事業者がホットスポットの設置を提案しているという。
通信事業者が流通業などの店舗にホットスポットを設置するときは、ホットスポット用に新たな回線を引くのが一般的だ。その回線にルーターと無線LANアクセスポイント(AP)をつなぐ。筆者が思いついたアイデアは、ホットスポットを置く場所を提供する企業と通信事業者でアクセス回線やルーターをシェアし、双方の費用負担を減らすことだ。カーシェアリングならぬ、ネットワークシェアリングである。
ネットワーク構成は図1の通りだ。設計、構築、ネットワーク機器、回線、保守・運用のすべてをNECがサービスとして月額料金で一括提供する。イニシャルコストはゼロで、毎月の費用は約40%削減される。ホットスポットはKDDIの子会社であるワイヤ・アンド・ワイヤレス(Wi2)が担当している。
図1●企業と通信事業者がネットワークをシェアする「ツルハ・モデル」
ネットワーク全体(回線、機器、保守など)をNECがサービスとして一括提供。費用の一部は、ホットスポット事業者が負担する。
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新ネットワークでは、店舗のアクセス回線に「フレッツ 光ネクスト」を使う。フレッツ 光ネクストのサービス対象外の拠点では、ADSLやワイヤレスブロードバンドの代替回線を利用する。コアネットワークはKDDIの閉域網(KDDI Wide Area Virtual Switchなど)だ。店舗のルーターにはPOS端末やPCを収容する有線LAN/イントラネット用無線LAN APと、ホットスポット用の無線LAN APを接続する。
各店舗のホットスポット用APからWi2データセンター内のワイヤレスコントローラーの間にはIPsecのトンネルを張り、ホットスポットのトラフィックを流す。これにより、イントラネットとホットスポットの通信は完全に分離されセキュリティを確保できる。
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